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手作り「えご」で幸せライフを その1

成人式ははるか昔の話、厄年すら迎えたというのに、どうしてもオトナになりきれていない。
精神面の問題はこの際おいておくことにして、このままでは将来、この横手での生活を半分も楽しめないのではないだろうかという不安の種が一つあるのだ。

筆者を悩ませるその原因。

それは、「えご」を美味しいと思って食べる、オトナの味覚を持っていないことである。

IMG_2083.jpg
不安が渦巻く重箱

■「えご」―横手市民がこぞって食べる海草食の最終形態―

ところで、横手市民は海草が好きだ。
寒天、おぼろこんぶ、まつも、ギバサなど、横手市民の食卓にはもはや義務と言っていいほどに海草の加工品が並ぶ。

ギバサ
ギバサ。冬が旬の海草。ゆでた後、包丁で叩いて醤油やだしで味をつけていただく

横手市は周囲を山に囲まれた盆地だというのに、何故か海草食の文化が根付いているのだ。
その憶測については以前にこの記事でも触れたが、運輸技術の発達していない時代、「日持ちのする海のミネラル分」として流通したことに端を発しているのではないだろうか。

ま、そんな考察はさておき、「えご」である。

えご
えご。

新潟では「いごねり」、九州では「おきゅうと」とも呼ばれる、海草食の最終形態。
大量の海草(えご草)を煮て溶かし固めたもの、という、実にワイルドな食品だ。
見た目は寒天のようであるが、そこに砂糖やたまごやフルーツといったあそびは介在しない。
ただただ口いっぱいに海草をほおばりたい、消化器官を海草で満たしたいという海草好きの思いが凝縮された塊なのだ。

その味わいは、一言でいうと「ふるふるとした味のない海」。
海水から塩を抜いてゼラチンを入れたらこんな感じになるんじゃないかっていう味。
そのくせ、磯の香りだけは強烈に押し寄せてくるのだ。

umi.jpg
イメージ(しかし塩辛くない)

そんな摩訶不思議な物体に、醤油だの辛子だの酢味噌だのをつけていただくわけなのだが、しょっぱさや辛さでは到底まかないきれず、やはり摩訶不思議は摩訶不思議のままだ。

この「摩訶不思議」という感覚を受け入れられないことが、すなわち「『えご』を美味しいと感じることができない」ということなのだ。

■「えご」が食べられないことによって起こる様々な障害

何事も、あるがままに受け入れるキャパの広さを持っていたいのに、こんなところでつまづいていていいのか。
「塩気のない海の味」だって、「こういうものもある」と受け入れたいではないか。
「えご」の味わいを受容した時に、きっと見えてくる新たな世界があるはずなのだ。
そんな素敵なオトナに私はなりたいのだ。

それに、こういった観念的な話だけではなく、このままでは横手での生活において、物理的に困った問題だって発生する。

この「えご」、もちろん普段の食卓にも登場する頻度は高いが、それ以上に親族間や年齢層の高い方々を交えた集まりの席で供されることの多い食品なのだ。
(上に掲示した写真も、ばーちゃんの七回忌の時に出されたものである。)

親族や年配の方々が「おいしいおいしい」と食べているものを「いえ、私はちょっと…」なんて言おうものなら、「かわいげのない奴」と思われてしまうんじゃなかろうか。

この高齢化の進む横手市の中で、そんな事態に陥ってしまっては、非常に住みにくくなってしまうではないか。
親戚と年寄りにはかわいがられたほうが絶対いい。

また、生きてるうちならまだしも、死後の世界でだって厄介なことになる。

私の実家は禅宗なので、月命日には仏壇にお膳を供えるのだが、その際にも高確率で「えご」が乱入してくる。

ozen.jpg
左上に鎮座まします「えご」の存在感よ(仏壇から下げた後なので、米は早々に炊飯器に戻した)

死後の世界まで追いかけてくる「えご」。
毎月毎月味わうことになる「無味海水の塊」は、得意でない者にとってはまさに地獄。

いや、遺言に「供え物に『えご』を加えてはならない」としたためておくことも可能かもしれない。
しかし、肉魚系がNGの献立を考える際に、「ボリュームのある海草由来の食材」という「えご」はうってつけなのだ。
それが「ダメだ」というのであれば、残された者たちは毎月悩みに悩みまくることだろう。
そんなことではとんだ不幸者になってしまうではないか。
閻魔さまの采配も推して知るべしだ。

そう、「えご」が食えないものが辿る末路は、どのみち地獄なのである。

■大袈裟な話はこのくらいにして、「えご」は手作りがうまいらしい

そんな私の心中を知ってか知らずか、にわかに周囲では「えご」がブームとなっている。
しかも、買って食べるほうではなく、自分で作るほうのブームだ。

え?!「えご」って自宅で作れるんですか?!

これまで「えご」は買って食べるもんだと思っていた。
自宅で作って食べるという発想がなかったのだ。

だって、原材料となる海草が何なのかよくわからないし、食器洗い用スポンジの半分くらいの大きさで200円はするという高級食品だ。
しかもこのホームページにもあるように、作るのに手間がかかるらしいし、それは専門の業者があらゆる技術を駆使して作るものなのではないのか?

しかし、巷の「えごラー」曰く、「『えご草』さえあれば、目玉焼きより簡単にできる」のだという。
そしてその「えご草」なるものも、意外な場所で実にフランクに売られていたのだ。

写真
レジ横にどんと置かれている

ここ、実は横手市内の農協である。
農協の購買は、農作物に使うあらゆる資材のみならず、「安心で安全な食」を提供すべく、様々な食材も販売されているのだ。
この「えご草」もまた、「安心で安全」というお墨付きを得て、農協の店頭に並んでいるのである。

そんな「えご草」を買い求めて、普段は農協とは無縁な「えごラー」達が入れ代わり立ち代わり毎日農協を訪れているという、不思議な現象が現在巻き起こっているのだ。

「市販の『えご』のふるふる感も捨てがたいけど、手作り『えご』の弾力がとにかく病み付きになる」「磯の香りが尋常じゃない」「『えご草』は少々値が張るが、一袋で大量に作れるので経済的」「2袋3袋まとめ買いは当たり前」ということのようだが、それって受け入れがたい原因が更に凝縮されただけの話なのではないか。

でもこの事象は見過ごせない。
そして、私の今後の横手ライフを変える絶好のチャンスでもある。

オトナになるんだ。
全てを受け入れるんだ。
そして天国へ行くんだ。

気が付くと私の腕には「えご草」がしっかりと抱きかかえられていたのである。

その2へ続く!

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Tag:コネタ  Trackback:0 comment:3 

Comment

ceci URL|おもしろいですね!!
#- 2014.06.21 Sat07:47
はじめまして!
東北を離れて15年以上になるので
楽しく拝見しました。

地方のいいところを知ってもらって観光客を送りたいと
旅のサイトを立ち上げたばかりで
日本各地のいいところを集め中なのですが…

こちらのブログがとってもおもしろいので
時々見にきたり出典付きで引用してもよいでしょうか?

横手にえごを美味しく食べられるお店は
ありますか??
OFFICE WAY URL|Re: おもしろいですね!!
#- 2014.06.22 Sun08:45
ceciさま
はじめまして♪
このたびはご覧いただきありがとうございました。
このようなブログでよろしければ、どうぞ紹介してください♪
ceciさまのサイトにもお邪魔したいので、URL教えてくださいね!
私も横手の魅力を、そこに住む「リアル」な視点から面白おかしく紹介していきたいと思っておりますので、これからもどうぞよろしくお願いします。

「えご」は、お店で食べるというよりは、市販のものを購入して食べることのほうが主なので、それを名物に提供している飲食店はちょっと聞いたことがないかもです…
お役に立てず申し訳ありません!
 |管理人のみ閲覧できます
# 2014.06.22 Sun15:47
このコメントは管理人のみ閲覧できます
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プロフィール

OFFICE WAY

Author:OFFICE WAY
ひょんなことから結成された、はいぱぁくりえいたぁ集団。
真面目な学習系セミナーからお笑いの舞台までオールマイティにこなし、地元秋田県横手市に笑顔をもたらすことを生業とする。
「真面目に馬鹿をやる」が座右の銘。

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